仕出し料理の考え方
旅する魚屋と仕出し料理、どちらも戸井鮮魚の根幹をなす大事な仕事。仕込みする魚は山積してます。
今日はその仕出し料理についての私の料理観念を少々お話いたします。
先日、パーティ料理の仕出しをした際、主催された奥様から、
「とっても美味しかったわ。ところで戸井さんはどこでお料理を勉強されたの?」
とご質問を受けました。
そういえば、いつからこんなに料理が好きになったのだろうか?
そしてどこで料理を勉強したのだろうか?
記憶を辿ると、大学時代の相模湾クルージングアルバイトしてたころ、船長がよく作ってくれた中華料理の清蒸の旨さが強烈でした。
清蒸とは白身魚一匹そのままの姿で紹興酒とかで蒸す料理です。港の岸壁に船を係留してキャビンの中でこれをつっつく。酒はラムをコーラで割ったクバリプレ、キューパの自由、をガブ飲み。短パンにポロシャツのエリを立ててヨットマン気取り、ワイルドでいい時代だったな~
本だと開高健の「オーパ」のなかに出てくる谷口教授の野外料理に心をときめかせ、その宝石のような高橋昇の写真に心奪われ、旨いという説明を゛筆舌を尽くす゛という表現を使うのは小説家として敗北である、と言い放つ開高健に心底惚れたものでした。
それと上京した際には必ず今流行りのフレンチやイタリアンを食べ歩きます。パクれる技術があるなら貪欲にパクります。今週末はどこに行こうかな?
ただ、無理して難しい料理技術を真似ても失敗するだけ。鮮度抜群の橋立の魚介を使うわけですから、料理法は単純であればあるほどいいのです。
料理に東京のスタイリッシュな洗練さはいりません。欲しいのは抜群の鮮度と、高揚するイベント感と、どこか懐かしさを感じる、以前そこに属してたかのような安心感なのです。その昔、家族が祝ってくれた誕生会のような、疑いのない愛情がなにより必要なのです。
男同士の飲み会ならデザートは必要ありませんが、女性にとってのそれは、メインデッィシュと同等の意味を持つくらい重要な一皿です。
肉料理を食べている最中なのに女性から、
「次はどんなデサ゜ートが出るのかしら?」
なんて先に言われたら終電の時間を先に言われてデートしてるみたいでイヤだな・・